完璧じゃない朝に

休日の朝、いつもと違うレシピでパンケーキを焼くつもりだった。

スムージーミキサーで撹拌した生地はトロトロで

焼く前から「これは失敗したな」と思いながら

それでも強引にフライパンに流し込んだ。

予想外にふくらんで、沈まないパンケーキを見て

もしかしたら案外うまくいくかも、と

淡い期待を抱きつつ、焼いている間にコーヒーを淹れた。

セリアのコーヒーフィルターに、まずは湯を通す。

じんわりお湯が染み渡っていくと

ふっと懐かしいにおいがした気がした。

小学校の教室

少しざらざらした、印刷物の紙のにおい。

歯医者の診察台で、ドキドキしながら吸い込んだ、清潔な不織布のにおい。

いくつかの記憶が、次々とフラッシュバックして

──なみや雑貨店の奇蹟 という物語を思い出した。

過去と未来を手紙でつなぐ、あたたかくて不思議な話。

コーヒーフィルターから漂ったあのにおいも

もしかしたら、あのころの私から、今の私への

ちいさな手紙だったのかもしれない。

「今日も生きてるね」

「パンケーキおいしそうだね」

そんな風に、ぽつんとつぶやくような。

ふわふわじゃなくて、真ん中はちょっと心配な

もはやぽよぽよのパンケーキを口に運ぶ。

ローストしたクルミを時々挟みながら

はちみつをかけてなんとか食べ切ろうとしている

休日のパンケーキタイム…悲

完璧じゃないブランチだけど

コーヒーはいつも通りおいしいから

こんな朝も小さな奇蹟ってことで、マル!!

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